Aという人が、自動車の絵を描きました。それは、だれが見てもたしかに自動車です。
Bという人が、同じように描いた自動車は“それが走っているのか、止まっているのか”がはっきりわかります。
さらに、Cという人の描いた自動車の絵は、その自動車が“79年型ロールスロイスで、ちょうどいま時速80キロくらいのスピードでカーブを切ろうとしている”といったことまでがよくわかります。
こんな場合、AさんよりBさんが、さらにBさんよりCさんが、表現力がゆたかで、たった一つの画面により多くの“情報”を描きこんだ、すぐれた描き手であるといえます。
そういったすぐれた表現能力を身につけるにはどうしたらよいのか、その答えは、基本である『デッサン』を十分にやって描写力をたかめること、その一語につきます。
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| ▲Aさん |
▲Bさん |
▲Cさん |
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〈デッサンにおける注意点〉
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1.
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まず全体のかたちをしっかりつかむように心がけよう。
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2.
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こまかいところばかりに気をつかうと全体のデッサンがくるいやすい。
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3.
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いつも、どんなときでも、ものをよく観察するくせをつけておこう。 |
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(1)物の形をおぼえよう
まずペンを使うまえに、エンピツで、手ぢかな物をかたっぱしから描いてみましょう。
デッサンは“目で描く”というくらい、よくみることが大切です。対象をよく見て描き、描きながら、一つずつ物の形を頭にたたきこんでいきます。
あらゆる物にひととおり挑戦したあとは、外へ出てみましょう。そこにはまたあらたな画材がまちうけています。
風景スケッチとともに、雑誌などから気に入った写真の模写をすることもいい勉強法の一つです。
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そうしているうちに、あなたは今まで思いもかけなかったことに、いろいろと気がつくはずです。ハサミや電話器にもいろんな型があること、松と杉の木はどこがちがうのか、消しゴムとマッチ箱は、どうすればそのちがいが描けるのか、といったことなどです。
そういった点につぎつぎと気がつきはじめることは、すばらしいことです。これはあなたの劇画家としての観察眼が一歩前進したことを意味します。 |
(2)人物を描いてみよう(手)
静物、風景に多少なりとも、自信がついたら、つぎは人体です。
しかし、この「人間」ほどむずかしいものはありません。なぜならそれは“生きもの”だからです。つねに動いています。そのうえ感情をもっています。そして、顔も体形も感情も十人十色、千差万別です。
そして、劇画の中心は「人間」です。人間のでない劇画はまずないでしょう。劇画にかぎらず映画もテレビも小説も、そこにドラマがあるかぎり登場するのが人間です。動物や昆虫しか出ない映画があっても、観る者が人間であれば、それは人間ドラマなのです。
では、この“やっかいな生きもの”をどのように描きこなしていくか、じっくりと勉強していきましょう。 |
てはじめに、あなたのエンピツをにぎっていないほうの手をデッサンしてみてください。
グー、チョキ、パーいろいろと変化をつけて描いてみます。手にもさえ“表情”があることに気がつきます。
手を描くことは、思いのほかむずかしいものです。しかし一流の劇画家はみんな手を描くことがうまい、と思ったことがありませんか?
じつはそのとおりなのです。手は人体における"小道具"のようなものです。手の描きかたしだいで、人物の感情まで表現することができるのです。
いろいろな形をした手を自由に描きこなせるようになったら、さらに一歩前進です。
(3)人物を描いてみよう(顔)
つぎに、顔を描いてみましょう。
まず、鏡に向かって自画像を描きましょう。見慣れた顔だけど、あらためて、目、鼻、口、まゆ毛、各部分の位置に注目しましょう。
家族の人たちにモデルになってもらうのもいい勉強法です。年齢のちがいがどのように顔の各部に表れているのか、そんなことに気がつけばしめたものです。
いろいろな顔を描いてみればわかるとおり人間の顔一つとりあげても、目も、鼻も、口も、まゆ毛も、耳も、またヘアスタイルも、こんなに複雑ないろいろな形があったのかと気がつきます。その"組み合わせ"がその人のいわゆる"個性"となるのです。 |
あなたも、いままで描いてきた顔の各部をあなたなりに組み合わせてみて、個性ゆたかな顔をつくってみてください。
(4)デッサン力は劇画家の財産
とにかく、描きます。なんでも、手あたりしだい、描いて描いて描きまくります。基本デッサンに"これで十分"ということは、けっしてありません。
そのうち、いろいろな物が、もういちいち見なくても描けるようになるでしょう。こうなってくるとしめたものです。その自由に描けるようになったものの一つ一つが、これからのあなたの“財産”であるのです。
この時期は、一つでも多くの“財産”をふやすように心がけましょう。これが将来のあなたの劇画家としての“資本金”です。 |
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