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さいとう・プロの劇画技術を公開した、劇画家を目指す人のテキスト
「さいとう・たかをの劇画専科」(リイド社/1980年刊/絶版)初等科コース第7回・講座です。
初等科コース・第7回・からだ、その描きかた
顔の描きかたをある程度マスターできたら、その顔にからだをくっつけてみましょう。
顔と人体は描きかたそのものに、さほどちがいがあるわけではありません。また顔とからだはべつべつに切りはなして考えることはできないものです。顔がそうであったように、より実際の動きに近いように、効果的な表現ができる描きかたを研究しましょう。
第7回 ペン描き(5)
(1)からだのバランス
人間のからだは、骨格と筋肉とで形成されています。そして、頭、胴、手、足、などそれぞれバランスがたもたれています。
ふつう、頭部は身長の8分の1程度、なかには外人のような短頭、脚長もいれば、頭でっかち、短足もいるでしょう。また子供の場合は頭部の比率が大きくなります。
人体のさまざまな動きを描くときは、からだの各部の長さ、大きさをよく頭に入れてデッサンしましょう。
このとき、ぬいぐるみ人形のような、骨格を持たないからだを描かないように。
からだの動きと骨格、筋肉の関係をしっかり頭にいれておくこと。
(2)からだの流れ、ポーズとスタイル
からだを描く、ということは、すなわちその人物が何かの動作をしているところを描くということです。そして、そのときにいちばん気をつけねばならないことは、いかにその人物をカッコよく描くかということになります。
さまになるポーズ、さまにならないポーズという言葉がありますが、この゙さまになっている゙ポーズとスタイルをつくりだすわけです。
人物が立っているだけでも、それがなんとなくカッコよく立っていれば、それだけでその画面がひき立つものです。
例えば、人が走っているシーンが必要になったとします。
(A)図と(B)図をくらべてみてください。
この場合、ひと目見て(B)図のポーズのほうが、カッコよく、さまになっている、といえるでしょう。
(A)図はどちらかといえば駆け足で、スピード感も(B)図におよびません。これに足音(擬音)を描きこむとすれば、(A)図は「タタタタッ」(B)図は「ダダッ」となりましょうか。
なぜ(B)図のほうが、さまになっているのでしょう。それは(A)図と(B)図をくらべると、あきらかに(B)図のほうにからだの動きの流れがあることがわかります。
スポーツもの、アクションものなど、とくにはげしいからだの動きを、しかもカッコよく描くことを要求される劇画では、このからだの流れをうまくとらえるかどうかが、画面を魅力的なものにするかどうかのきめ手になります。
からだを描くときは、つねに動作の“流れ”を大切にして、すばらしいポーズをつくるように気をくばりましょう。
(3)からだの描きかた
ポーズ、スタイルを頭にえがいて、エンピツ・デッサンする。あくまで骨格と筋肉の動きを忘れずに、裸体のつもりで。
骨ぐみができたら筋肉をつけ、筋肉に合わせて、ぴったりした服を着せよう。
ペン入れ。線にアクセントをつけ、動きをより強調する。
でき上がり。消しゴムをかけ、ポイントとなるネクタイなどに、もようとベタを入れる。
(4)服装のしわ
人物を描くとき、そのほとんどは服などを着ています。服にはかならずどこかに“しわ”ができており、またその“しわ”を描くことはやっかいですが、たいへん重要なことでもあるのです。
服のしわはきまった形をしていません。ほんの少しからだを動かすだけでしわの形ががらりと変わります。服装の種類、生地などのちがいからも、しわのでき方がちがってきます。
たしかに服のしわはやっかいなシロモノです。しかし、服のしわをうまく描くことができれば、人物のからだの動きを表現するための大きな手助けともなり、また、画面に(その人物に)立体感をあたえることができるのです。
まず、さまざまなからだの動きによってできる服のしわを実際に目で見て研究しましょう。とくに注意するのは、
しわのできるところ、
しわの集まるところ、
しわの向き、です。これらには人間のからだが同形であるかぎり、どんな動きにも共通点があるはずです。
しわの描きこみ場所をのみこんだら、そのからだの動きをズバリ表現するには、どんな線で、何本くらい描きこめばいいか、といったことを考えます。
〈服のしわを描くうえの注意点〉
1.
服のしわは、必要数の最低限にとどめます。線の数があまり多くなると、いい服も台なし、画面をきたならしくするおそれもあります。
2.
太い線、細い線をうまく使いわけて、適かくにしわを表現できる工夫をしましょう。
3.
いつも、どんなときでも、ものをよく観察するくせをつけておこう。
(5)服装のデザイン
服装のスタイル、服のがら、もようも、その人物の個性を表現するための一つの手段です。その人物の役がらに、いちばんぴったりしたものをよく考えて選ぶようにしましょう。
また、服のがらやもようは、画面に変化をつけるのに役立ちます。この場合も描きこんだ服のしわがよく見わけられるように、しわと同系のもようを描くのはさけましょう。
(6)模写は上達の第一歩
“模写”とはマネをして描くことです。
はじめのうちは、いろいろな劇画作品から手あたりしだいに模写することは、上達のための手っとり早い勉強法のひとつです。
現在、活躍中のプロ劇画家のほとんどが、その第一歩は模写であったといっても過言ではないでしょう。
また劇画家にかぎらず、日本画家も洋画家も、むかしから模写の重要性をみとめておこなってきました。
あなたも手近の雑誌を開いて、どしどし模写してください。
ただし、自分の好きな劇画家だけとか、好きな劇画スターだけ、というのは感心しません。あらゆる劇画家の絵をかたっぱしから写しとるように心がけます。
それによって、顔のつくりかた、表情の描きわけ、デフォルメの方法、ペンタッチや線のアクセントのつけかた、どの部分にはどんなペン(筆やサインペンも)が使われているか、など、あらゆる劇画のテクニックを学ぶことになるでしょう。
こうして模写になれてきて“そっくりさん”が描けるようになったら、その次はあなたの線で、あなたの絵を描くようにしてください。
模写はあくまで“ものマネ”です。最後はそれを追いこさなければなりません。
「劇画専科」初等科コース第8回・講座は
「画面をつくる(1)」
です。
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