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さいとう・プロの劇画技術を公開した、劇画家を目指す人のテキスト
「さいとう・たかをの劇画専科」(リイド社/1980年刊/絶版)初等科コース第9回・講座です。


初等科コース・第9回・画面を作る(2)
 前回『画面をつくる(1)』では、画面の 『構図』 『ディスタンス(距離)』 『アングル(角度)』 について勉強しました。
今回は、劇画の小さく区切られた一つの画面、それを 『コマ』 といいますが、劇画はその大小のコマがつながりあって、ストーリィを進めていますので、その 『コマ取り』 『コマ運び』 について勉強しましょう。

第9回 コマ取り、コマ運び

(1)コマの形

“コマ”の一つ一つの大きさ、かたちはまったく自由です。これは映画もテレビも劇画にかなわないところで、ヨコに長いもの、タテ長、あるいはマル、など構図的に自由自在に画面をつくることができます。またなかには1ページをまるごと一コマに使ったものや、本の見開き2ページにまたがるものなどもあります。これなどさしずめ劇画の“ワイドスクリーン”といったところでしょうか。

(2)コマ取りは自由
  コマ取りは自由といいましたが“やってはならないコマ取り”というものがあります。 それは、読んでいく順序がまったくわからないようなコマ取りです。
  ごぞんじのとおり、劇画には見かた読みかたのルールがあります。
  本を開けば、まず右のページの上段の右コマからはじまり、つぎに左のコマへ、そしてその段が終われば次の段の右へ、といったぐあいです。(ただし、外国の劇画、コミック・ストリップの場合はまったく逆になります)
  したがって、うまいコマ取りとは、まず読者の“目の流れ”を考え、それにさからわないもの、いいかえれば読みやすいコマ取りを工夫することになります。
拡大画面になります。 拡大画面になります。 拡大画面になります。 “コマ取り”とは、1ページ分の原稿をいくつかの画面に区切る作業をいいます。   初期の劇画では、まだストーリィ・マンガの影響からぬけだせなかったせいか、はっきり1ページが3段、あるいは4段に区切られ、それを細分化して3コマから12コマぐらいで1ページが構成されているものがほとんどでした。 しかし、現在の劇画ではまったく自由にコマ取りがされています。
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拡大画面になります。 拡大画面になります。 拡大画面になります。 拡大画面になります。
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(3)コマ取りのしかた
 コマ取りは、劇画づくりのうえでたいへん重要な役わりをもっています。ちょうど音楽のリズムに似ていて、各コマの大小や形がうまく適当に組み合わされつながっていると、ストーリィのもりあがりかたがちがってきます。そんな場合を“コマ運びがいい”といいます。   コマ取りはストーリィの時間的な流れ、読者の読んでいくスピードとおおいに関係していて、この両者がぴったり一致していると、スラスラと読みやすく、したがって読者をストーリィのなかに引きこめるというわけです。
 
拡大画面になります。 拡大画面になります。 拡大画面になります。 拡大画面になります。
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拡大画面になります。  基本的には、テンポを速くするときは、コマを小さくし、それによって読者がそのコマを見る時間を短くし、見せ場となるシーンは大きなコマをとって、たっぷりながめてもらうようにします。
 また会話のシーンのような、落ちついた感じのときは、落ちついた形のコマを、反対に動きのあるシーン(アクション)などは、変型のコマを組み入れると効果が上がります。
 また、場合によっては、画面を構成するうえで、人物、背景、セリフのわく(ふきだし)などの配置をあらかじめ考えておき、そのシーンにいちばん適する形のコマ、どうしても必要な形(タテ長とかヨコ長とか)のコマをまず取っておき、そのコマを基本にして、ほかのスペースを区分していく方法もあります。
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 いずれにしても、コマ取りはストーリィの進行と一体化したもので、つねにそのシーンを考え、頭の中で下描き、構図づくりをしながらコマ取りするようにしなければなりません。

(4)コマ運びとテンポ
 これもストーリィによってテンポの速いもの、ゆったりしたテンポが適するものがあって、いちがいにいえません。この点は音楽や映画となったく同じに考えていいでしょう。
  子守歌や演歌調、またホームコメディやラブ・ストーリィは比較的おそいテンポで、行進曲、アクション映画が速いテンポを使うようなものです。
  しかしストーリィによってあらかじめきめられているようなテンポですが、全篇を通して考えた場合にはテンポの流れ、起伏というものがあります。

 劇画の場合、基本的には四段階にわかれ、導入部(イントロ、プロローグともいう)では、ややゆるやかなテンポでスタートし、中間部ではだんだんテンポを速めていき、クライマックスで最高潮にテンポを速め、終幕(エンディング、プロローグともいう)で、ふたたび、テンポをやや落とします。
  この点は映画づくりとまったく同じですが、劇画は映画とちがって読者がそのように読んでくれるかどうか、作者が一方的にきめられない部分もあって心細いのですが、いちおうコマ運びには、このようなテンポの変化を計算に入れておきましょう。
  コマ運び、テンポのつけかたの勉強法の一つに、映画やテレビドラマを見るのはよい方法です。フィルムの1カット、1カットのつなぎぐあい、その時間的な関係を研究しましょう(テンポを早くするときは各カットが短くなる)

(5)コマ取りの注意点

(1)
1ページごとに変化をつけ、同じようなコマ取りがつづかないようにしよう。同じようなコマ取りは同じような構図をつくりやすい。
(2)
あまり小さく切りきざまないこと。大きいコマと小さいコマをバランスよく配置しよう。
(3)
極端な変形コマは読みにくさのもと。平凡なのもそれなりの効果があることを知っていよう。
(4)
たち切りのコマを使うときは、切られてしまう部分を想定してから構図をとろう。

拡大画面になります。 拡大画面になります。 拡大画面になります。 拡大画面になります。
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(6)コマ取り原版をつくろう
 コマ取り原版とは、画用紙に原稿の寸法を描き、コマ取りの基本的な線のしるしをつけたものです。
  原稿用紙に一枚ずつ寸法を計って線を引くのはたいへんめんどうですから、この原版を使って、キリや、おしピン(画びょう)でしるしのところに穴をあけます。10枚ていどなら一度で穴があき、その穴をめやすにしてエンピツで線を引いて、自由にコマ取りをします。
  原稿の寸法は、それをのせる本や雑誌によってそれぞれちがいます。出版社(編集部)に問いあわせたりして、たしかめておきましょう。新人原稿の募集などするときは、かならず原稿の寸法(タテとヨコ)が記されています。それは1ページの外ワクの大きさを示したもので、用紙の大きさではありません。 どうしてもわからないときは、本の印刷されたものから寸法を知る方法があります。
  劇画の原稿は、ふつう原寸(印刷された寸法)より大きく描きます。それは大きくかけばこまかい部分でもていねいに、また描きやすく、それが印刷されると、縮小され、絵がしまってきれいになります。 大きさは、ふつう原寸の1.2倍から1.5倍くらいで、さいとう・プロの場合は1.2倍に描いています。倍率が大きければ描きやすいことはたしかですが、それだけ描く面積がひろくなって、時間がよけいにかかるということもありますし、印刷になった時の効果がわかりにくいという難点もあります。
  倍率の出しかたは図のとおりです。原稿の大きさは描きやすい倍率をえらべばいいわけですが、ただタテとヨコの比率をまちがえると本になりません。
  画面をつくるということは、劇画をつくることの基本となります。そして劇画には、構図、ディスタンス、アングル、そしてまたコマ取りにしても「このシーンはこのように描かなければならない」といったルールがあるわけではありません。
  かさねていっておきますが、劇画の表現は自由で無限なのです。あなたの豊かなセンスでフレッシュな表現を開発してください。そしてまたそれが劇画を描く楽しみでもあるのです。

「劇画専科」初等科コース第10回・講座は「背景について(1)」です。

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