第3回さいとう・たかを賞受賞は、構想12年、作画と噛み合った骨太で巧みな作品


第3回さいとう・たかを賞受賞は、構想12年、作画と噛み合った骨太で巧みな作品


分業・プロダクション方式での制作を行っている応募作品の中から1作品を選定して正賞を贈り、その栄誉を称えるマンガ賞として2017年に創設した「さいとう・たかを賞」。第3回目となる2019年度には、13作品が集まりました。

 

さいとう・たかを劇画文化財団による一次選考会を経て最終選考会に選ばれたのは、『アイとアイザワ』(漫画:うめ 小沢高広・妹尾朝子、原作:かっぴー)、『前科者』(原作:香川まさひと、作画:月島冬二)、『マイホームヒーロー』(原作:山川直輝、漫画:朝基まさし)、『約束のネバーランド』(原作:白井カイウ、作画:出水ぽすか)、『レイリ』(原作:岩明均、漫画:室井大資)の5作品。

 

 

 

 

2019年11月13日(金)、さいとう・たかを、池上遼一氏、佐藤優氏、長崎尚志氏、やまさき十三氏の5名による最終選考が小学館で行われました。

 

▲最終選考の様子の写真

 

それぞれの作品に対する評価が分かれた中、岩明均氏による12年の構想をかけられた骨太の原作と、それに噛み合った迫力ある作画を担った室井大資氏による、百姓の娘が「武田信勝の影武者」となり、成長していく様子を描いた『レイリ』が受賞作として選ばれました。

 

2020年1月17日(金)に行われた記者発表・授賞式には、原作の岩明均氏、作画家の室井大資氏、編集者の澤考史が登壇し、賞の贈呈が行われました。

 


▲授賞式の写真

 

<受賞者コメント>(※2020年1月当時のコメントを再掲)

 

▼受賞者コメント

 

シナリオライター/岩明 均(いわあき・ひとし)

 

私は自ら作画しての漫画も描くのですが、この「レイリ」に関しては初めから、自分での作画・作品化は無理だと思いました。アシスタントを使わない、というより人に上手く指示・指導ができない性分の私は、普段も「1人作業」でどうしようもなく遅筆となり、すでに進行中の他の1作品を作画執筆するとそれでほぼ手一杯になってしまうからです。時間はかかりましたが何とかシナリオを完成させた後は、秋田書店の沢さんに漫画家の人選など制作全体を仕切っていただき、漫画家の室井さんには私には無い持ち味を存分に発揮していただきました。今回本作を評価いただいた事、1人作業の時には無い感慨、喜びを感じています。本当にありがとうございます。

 

1960年生まれ。漫画家。代表作は「寄生獣」「ヒストリエ」。シナリオ執筆としては手塚治虫の作品「ブラック・ジャック」を原作とした「青き未来」(山石日月名義、漫画/中山昌亮)があるが、オリジナルの漫画原作としては「レイリ」が初作品。

 

 

作画家/室井大資(むろい・だいすけ)

 

岩明均先生をずっと尊敬していました。1990年、雑誌「宝島」のマンガレビューで、「寄生獣」っていうマンガがヤバいってレコメンドされてて、で、読んで。あんなに脳の汁が出る体験ははじめてでした。それ以来ずっと「岩明均」が好きで。ぜんぶ好きです。

だからほんとに、一緒に仕事できるのが信じられなくて、幸福でした。
「レイリ」という作品の座組みの中に混ぜてもらえて、本当によかった。
レジェンドでありつつ、現役最前線で戦い続けている先生方に、「レイリ」を選出していただけたのは、とても光栄ですし、報われた気持ちになりました。ありがとうございます。
この賞を機に、もっと多くの人に読んでもらえるとうれしいし、賞金50万円もうれしいです。
やはりフリーランスにとっての不労所得というのは何にも代えがたいものなのではないでしょうか。
50万、地味にうれしいです。何を買おうかわくわくします。ありがとうございます。岩明さんと沢さんもありがとうね。

 

福島県出身。漫画家。00年「海岸列車」でデビュー。代表作に「イヌジニン」「エバタのロック」「秋津」など。沢田新の名義で原作をつとめる「バイオレンスアクション」(漫画/浅井蓮次)をコミックサイト「やわらかスピリッツ」にて連載・続刊中。

 

 

編集者/沢 考史(さわ・たかふみ)

 

岩明均先生が12年の歳月をかけて完成させた原作を、一気に読ませていただいた日の感動を忘れることはできません。完璧な何かがここにあると確信しました。そして、室井大資先生という強烈な魅力を発するもう一人の作家が漫画作品としてあらためて生み出してくださった。圧倒的な才能が最高の原作と踊るダンスを目の当たりに出来た幸福。今、担当編集者として、完成した作品へ高い評価をいただけたことに、深い喜びと皆様への感謝を抱いております。

 

1989年(株)秋田書店に入社。週刊少年チャンピオン(部員)、ヤングチャンピオン(部員/副編集長)、チャンピオンRED(編集長)、週刊少年チャンピオン(編集長)、別冊少年チャンピオン(編集人)を経て、現在取締役編集局長。

 

<選考委員コメント>

 

池上遼一氏
異才と言われる漫画家が、構想から12年の歳月をかけて書きためた原作にふさわしい、完成度の高い歴史ドラマに仕上がっている。
その奇抜なストーリーもさることながら、心理描写やアクションシーンの演出に特異な工夫があり、独特のリアリティーを感じさせる。
これも実力ある漫画家が作画を担当したゆえんか…。 

 

佐藤 優氏
完成度がとても高い。歴史に「もし」は禁物であるが、こういうことが十分あるように思えてくる。着地も優れていて読後感がいい。レイリのキャラクターもチャーミングで、大人の鑑賞に十分に耐えながら、子どもが読んでも楽しめると思える作品。

 

長崎尚志氏
なかなかの傑作。キャラクターもストーリーもすぐれている。死にたがっている人間を影武者にするという設定が上手い。
もう少し長く読みたかったが、終わり方がやや淡泊に感じた。

 

やまさき十三氏
主人公は女性ながら戦国武将の影武者という設定。
映画やドラマでもよく使われる設定にもかかわらず熱く爽快な青春物語に仕上がったのは、骨太の脚本と、それを静と動の息もつかせぬ迫力ある画面として仕上げた作画の力である。

 

さいとう・たかを
室井氏の他の作品は拝見していないが、まるでこのドラマを描くために創られたようなペンタッチの絵である。なかなか見せる。コマの運びもなかなかいい。

 


「第3回さいとう・たかを賞」第2回 概要

 

<選考対象>
シナリオライター(脚本家)と作画家の分業により制作されており、2016年9月1日~2019年8月31日の期間中にコミックス第1巻が刊行されている、成人男女を主な読者対象としたコミック作品

 

<賞品>
表彰対象は、該当作品のシナリオライター・作画家・担当編集者(または編集部)の3者とします。
【正賞】ゴルゴ13像トロフィー(シナリオライター・作画家・担当編集者)
【副賞】50万円(シナリオライター・作画家)

 

<最終候補作品>

『アイとアイザワ』
漫画:うめ(小沢高広・妹尾朝子)
原作:かっぴー
ナンバーナイン、全2巻

 

『前科者』
原作:香川まさひと
作画:月島冬二
小学館「ビッグコミックオリジナル」掲載、全6巻

 

『マイホームヒーロー』
原作:山川直輝
漫画:朝基まさし
講談社「週刊ヤングマガジン」連載中、既刊12巻(2020年9月現在)

 

『約束のネバーランド』
原作:白井カイウ
作画:出水ぽすか)
集英社「週刊少年ジャンプ」掲載、全20巻

 

『レイリ』
原作:岩明均
漫画:室井大資
秋田書店「別冊少年チャンピオン」掲載、全6巻

 

主催:一般財団法人 さいとう・たかを 劇画文化財団
後援:小学館