ゴルゴ13名エピソードガイド 第318話「バイオニックソルジャー」

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ゴルゴ13 名エピソードガイド 第318話「バイオニックソルジャー」

 

 

 

ゴルゴが50年もの間に戦ってきた相手は様々だが、中でもその時代その時代の最新科学技術が生み出した敵とのバトルは読者にとって最上のご馳走に違いない。近作でも無敵とも思える最新AIを相手にするエピソードがあってかなり我々をワクワクさせてくれたが、1993年3月に描かれた「バイオニックソルジャー」では優秀な遺伝子を掛け合わせて生み出された戦士が相手であった。

 

 

アメリカが1967年にスタートさせた国家戦力開発の秘密プロジェクトの最高傑作という設定で、ゲリラ戦の天才と短距離走の天才の遺伝子を掛け合わせ、さらにありとあらゆる最新ドーピングで能力を高められた戦士・ライリーが威信をかけてゴルゴに挑むというストーリーだ。

 

 

優秀な遺伝子を掛け合わせるという発想の元は20世紀初頭に生まれた優生学だ。良い遺伝子を残し、改良することで人類の進歩を促そうとする考えはまずアメリカで流行り、その後ナチスドイツに大きな影響を与えた。ヒットラーの間違った優生思想によって大虐殺がなされたことで第二次世界大戦後はタブーとなったが、1970年代に遺伝子工学が発展すると再び注目を浴びるようになる。

 

そこで新たに生まれたのがトランスヒューマニズムという思想だ。新しい科学技術を用いて人間の身体と認知能力を進化させようとする考え方のもと、様々な研究が行われるようになった。

 

 

このエピソードが描かれた90年代前半はその全盛とも言える時期で、ここでもゴルゴは現実的な世界の最前線の科学と戦う羽目になるのだ。その後の研究でいくら先天的に優秀な遺伝子を掛け合わせても後天的に鍛えられた能力には劣るという研究結果が発表されており、またしてもゴルゴは時代の先を行っていることを証明してしまった。

 

 

 

 

 

Writer

今秀生